集中治療
ECPR・脳低温療法
急性心筋梗塞、致死性不整脈、肺動脈塞栓症などで起こる病院外心肺停止に対してはドクターカーを現場に出動させて、救急隊とともに早期から蘇生行為に携わっています。自己心拍が再開した症例は初療室や血管造影室に搬送して精査と治療を行います。心拍が再開しない症例で体外循環式心肺蘇生法(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation:ECPR)の適応があると判断すれば、経皮的人工心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)を速やかに導入します。心停止後症候群(post cardiac arrest syndrome:PCAS)は自己心拍再開後に全身の虚血再灌流障害に起因する種々の生体反応が惹起された状態と定義され、「心停止後脳障害」、「心停止後心筋機能不全」、「全身虚血再灌流反応」「心停止を発症した病態の継続」の4つの病態が問題となり、これらの治療が転帰の改善に大きな影響を与えるとされています。我々は急性心筋梗塞に対する早期再灌流療法、ICUでの厳格な体温管理(脳低温療法)などの集中治療を積極的に行い、社会復帰率の向上に努めています。
VV-ECMO
当センターでは、救急車からの直接搬入のほかに近隣周辺病院からの重症呼吸不全の受け入れを行っております。その中でも人工呼吸器管理に反応せず、
・P/F ratio=100~150以下(FiO2:1.0)の低酸素性急性呼吸不全
・コントロール不良の高二酸化炭素血症(pH7.1以下)
に対してはレスキューとしてVV-ECMO(veno-venous ECMO)導入を行います。
・P/F ratio=100~150以下(FiO2:1.0)の低酸素性急性呼吸不全
・コントロール不良の高二酸化炭素血症(pH7.1以下)
に対してはレスキューとしてVV-ECMO(veno-venous ECMO)導入を行います。
VV-ECMO
ECMOとは膜型人工肺を用いた機械的補助装置のことです。その中でもVV-ECMOとは、respiratory ECMOとも呼ばれ呼吸補助を目的とします。静脈より脱血し体外式膜型人工肺を用いて酸素と二酸化炭素を交換、再度静脈に送血を行い、呼吸不全の改善を行います。導入後、人工呼吸器管理は積極的肺保護戦略を行い、原疾患治療の期間を確保することが可能となります。
当院での取り組み
ECMOプロジェクト
日本呼吸器療法学会が中心として立ち上がったECMOプロジェクトに参加し、集中治療室での長期管理に適した送脱血管や人工肺に変更しました。また集中治療室でのメンバーとも勉強会を行い、日々向上に努めております。当センターのECMO管理は世界標準を目指しています。
世界標準のVV-ECMO管理を目指して
2013年 日本呼吸療法学会 ECMOプロジェクトに参加
2014年 ECMO JAPAN主催 ECMOシュミレーションラボに参加
2015年 ドイツRegensbrug大学病院にてECMO研修
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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VA-ECMO | 38 | 46 | 54 | 30 | 30 | 39 |
VV-ECMO | 7 | 8 | 5 | 9 | 2 | 6 |
重症急性膵炎
急性膵炎はアルコール、胆石、高脂血症などが原因となり膵臓に急性炎症を起こす疾患であり、膵臓の消化酵素が活性化されて膵臓自身を消化して高サイトカイン血症をきたす疾患です。そのなかで重篤なものは重症急性膵炎といわれ、急性膵炎の約20%をしめます。重症急性膵炎では持続的な激しい上腹部の痛みのほか、ショック、呼吸困難、意識障害、腎機能障害など多様な症状を引き起こし、多臓器不全へと進行することもあります。予後は近年改善傾向ですが、死亡率は10%程度とされ、厳重な集中治療管理を要する疾患です。ICUでの治療としては、全身管理に加えて、タンパク分解酵素阻害薬や抗菌薬の膵局所動注療法、早期経腸栄養管理、持続緩徐式血液濾過透析などが行われます。また、膵壊死や感染を合併した場合はドレナージや外科手術を行う場合もあります。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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総件数 | 16 | 14 | 7 | 6 | 5 | 4 |
生存退院 | 14 | 13 | 7 | 6 | 3 | 3 |
救命率(%) | 87.5% | 92.9% | 100.0% | 100.0% | 60.0% |
敗血症治療
救命救急センターに搬送される重症症例のなかで、敗血症は最も重要視している疾患です。敗血症は感染症を原因とする高サイトカイン血症とそれによって引き起こされる全身性炎症反応の病態です。敗血症診療では早期の診断と治療、および集中治療が予後を決定します。なかでも重症敗血症や敗血症性ショックでは診療の過程で緊急外科手術、人工呼吸管理、モニタリング、DIC治療、急性血液浄化療法、栄養管理など多彩な診療技術や知識が必要となります。また、患者さんの救命と社会復帰に向けては、医師だけでなく看護師、臨床工学技士、理学療法士などとの多職種の連携が重要です。近年、敗血症のガイドラインが公表され、診療成績も向上してきていますが、重症症例では依然として死亡例も散見されます。このような重症症例の治療成績を向上させるため、我々は日々ディスカッションを行い、治療方針を検討して実践しています。
当院での敗血症性ショックの治療成績
注)1 APACHE IIscoreは全症例の平均値です。
注)2 予測死亡率はAPACHE II scoreから算出された値の平均です。
急性血液浄化療法
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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CHDF | 37 | 49 | 52 | 21 | 22 | 17 |
HD | 30 | 29 | 38 | 33 | 24 | 40 |
PMX-DHP | 19 | 16 | 16 | 2 | 0 | 5 |